【SPECIAL】『ムーンライト』Blu-ray&DVD発売記念トークイベントレポート ゲスト:宇野維正さん、西寺郷太さん

9/21(木)LOFT9 SHIBUYAにて『ムーンライト』Blu-ray&DVDの発売を記念したイベントが行われました。当日は、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏(以下、宇野氏)、NONA REEVESのボーカルで音楽プロデューサーの西寺郷太氏(以下、西寺氏)がゲストとして登壇し、第89回アカデミー賞5部門にノミネートされ、作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞した話題作『ムーンライト』について、アメリカ映画の現状や音楽シーンを踏まえて、お話をしていただきました。

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映画『ムーンライト』から受けた印象は?

宇野氏:いろんな意味でネクストレベル感があると思いました。90年代の『ボーイズ・オン・ザ・フッド』とか『friday』とかのブラック・ムービーブームとは今のムーブメントは違っていて。あれは70年代のブラック・エクスプロイテーションの系譜であって、商業的には成功したけど、スパイク・リーのような一部の監督の作品以外は評価がついてこなかった。『ムーンライト』が画期的だったのは、アートとして評価された、ということ。
今回は、監督や出てる人が全員黒人。だけれど、プロデューサーのアデル・ロマンスキーやブラッド・ピットも音楽も白人。そういう意味で、新しい時代のブラック・ムービーと言える。『ムーンライト』は表に出るのはブラック・カルチャーを象徴する役者、監督、設定なんだけれど、それを今の映画界のものすごく才能がある人が支えている、っていうのがとっても今の映画だと思います。

西寺氏:自分が認められないものだったり敵だったり、違う人種だったり違う考え方だったりの中にもいろんなパターンがあるよ、ってことをこの映画は描いているんだと思うし、それは今最も必要とされていることだと思います。

宇野氏:高い評価を得る作品って、常識を覆す部分がある。『ムーンライト』もこれまで観たことのないマイアミが描かれていて、映画でこれまで描かれてきたドラッグやLGBTQを全部ひっくり返す鮮やかな映画。

西寺氏:主人公を年代別に3人の違う役者が演じてますけれど、それを敢えて似た人を選んでないところとか、リハを入念にするんじゃなくて、初めて会ったオドオドした感じを一回目のテイクでオーケーしたとか、脚本の追い込みは散々した上で、瞬間の感覚をパンと押さえたりもする。その混ぜ合わせ方の妙をすごく感じる映画ですよね。
それと、原作の戯曲「in moonlight black boys look blue」って、タイトルがめっちゃかっこいい!ボブ・ディランの「If you see her say hello」みたいに英語の簡単な単語だからこそ感じるハードボイルド!その背後に何があるんだろうという。これめっちゃかっこいい!

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『ムーンライト』をとりまくアメリカ事情と音楽について

宇野氏:この映画の舞台はマイアミからその後アトランタに移りますが、今世界の中心ってアトランタなんですよ。今アメリカで撮る映画ってLAとかNYとか以外の特定じゃなくていい場所は、ルイジアナかジョージアで撮っているんです。そこで撮ると税制優遇があるんで。NYもそういう制度がありますが、今、ジョージア州はそうやって映画の誘致をすごく盛んにやっている。
音楽の流行も全部アトランタですから。その象徴が今の(音楽のジャンルの)トラップのブーム。また、かつてはLA&ベイビーフェイスやジャーメイン・デュプリもプロダクションをアトランタに置いていてアメリカの音楽業界の中心というとNYかLAのイメージだけれど、90年代くらいから完全に三大都市の一つになったんです。今はもう中心なんですよね、特にラップにおいては。
アメリカのブラック・ミュージックの世界では、今、男性ソロアーティストでは、ケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパー、ドナルド・グローバー、フランク・オーシャンというとてつもない4人の天才がいて、『ムーンライト』も、4人の天才の一人ケンドリック・ラマーのアルバム「To Pimp A Butterfly」の始まりと同じで、「Every N****r Is a Star」で始まる。ダイレクトに『ムーンライト』に影響を与えてます。

西寺氏:しかも『ムーンライト』はフランク・オーシャンの話みたいですよね。監督のバリー・ジェンキンスが、ケンドリック・ラマーにシンパシーを感じて、それで、ギャングスター的な映画ではなくこういう映画の一曲目にケンドリック・ラマーを引用しているのは、すごく符号しているというか、今を生きている感じがするし、その主人公がフランク・オーシャンのように思える、っていう。 今の音楽界の天才たちに映画に実際出演してくれって言ってもいいのにそれはせずに、でも、リンクしている、っていうその加減は絶妙ですよね。

 宇野氏:『ムーンライト』で音楽を担当しているニコラス・ブリテルさんは白人で、特典映像見ると判るんですが、クラシックのスコアをヒップホップのチョップド&スクリュードという手法でいじってて、どんだけすげえんだよ、って思います。『セッション』も一緒に作っている人なんですよ。デミアン・チャゼルと。だから『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』を白人映画と黒人映画の対決みたいなアングルで語るのはホント馬鹿らしい。『ラ・ラ・ランド』にだって黒人のスタッフはいるし、『ムーンライト』だって白人のスタッフがいる。
それから『ムーンライト』はカラコレもすごい。シリアスな話なんだけど映像的にはすごくカラフルできれいというのがこの映画のポイントだと思う。

西寺氏:きれいな映画ですよね。残酷なシーンもありますけど、映像的に美しい。

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最後に一言お願いします。

西寺氏:もう一回改めて観る事で発見のある映画だと思います。だいぶ前に観て、みんなも観てて、いろんな文章が出てきて、それでもう一度こういうタイミングで、DVDとかが出るタイミングでまとめようとする、それが愛だな、と今日の出演の話を頂いた時思ったんですよ。だから、これで改めて届くきっかけになればいいな、と思うんですよね。あと、家の棚にこのDVDがあると自分の立ち位置が伝わるというか、意識が伝わるっていう。

宇野氏:このタイミングで観る人もたくさんいると思いますしね。でも女の子の家の棚には『ラ・ラ・ランド』が置いてある方が・・・。笑

西寺氏:どっちも置いて欲しい!

宇野氏&西寺氏:ありがとうございました!

(撮影=呉仲賢)

【宇野維正/プロフィール】映画・音楽ジャーナリスト。『リアルサウンド映画部』主筆。『GLOW』『装苑』『NAVI CARS』『文春オンライン』『Yahoo!個人』などでコラムや対談を連載中。著書に『1998年の宇多田ヒカル』、『くるりのこと』(くるりとの共著)。2017年晩秋、3作目の著書が刊行予定。

【西寺郷太/プロフィール】NONA REEVESのボーカル、そして音楽プロデューサーとして活動。バンドではボーカルであり、多くの楽曲で作詞・作曲も担当している。また、音楽プロデューサー、作詞・作曲家としては少年隊やSMAP、V6、KAT-TUN、岡村靖幸、中島美嘉などの多くの作品に携わる。
そして、日本屈指の音楽研究家としても知られ、特にマイケル・ジャクソンをはじめとする80年代の洋楽に詳しく、これまでに数多くのライナーノーツを手がけ、近年では80年代音楽の伝承者として執筆した書籍の数々はベストセラーに。
テレビ・ラジオ出演、雑誌の連載などでも精力的に活動し、現在WOWOWのインターネット番組「ぷらすと」にレギュラー出演中。

映画『ムーンライト』Blu-ray&DVDは好評発売中!
http://bit.ly/2siJeSm

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